人物レポート

鉄は生きているからこそデリケート

鉄を扱う上でとても基本で重要な「溶接」ですが、
工場長はなぜこのお仕事を?

なんでこの仕事に携わったかって?なんだっただろうなあ(笑)わすれた。でもとにかく何かを創り出すこのは好きだったな。「作る」、じゃなくて「創る」。そういったお金にはかえられない部分が今でも魅了されているというか。

最初はとにかく大変だった。
溶接を主に担当しているんだけど、派手なアクションもないし、じっと「ジジジ」ってやってるだけで一見簡単そうに見えるだろ?オレもそう思ってたんだけど(笑)仕事と認めてもらえるまではけっこう(時間が)かかった。毎日廃材を利用して溶接の練習をしていた。なんせ失敗したからってやり直しはできないからね。もちろん溶接の免許はもっているけどそんなのはただの前提っていうか、できるかどうかが重要なわけで。

坂下鉄工所 工場長

まあ、これは一度でも体験した人なら分かるけど一口に溶接っていってもすごく幅が広い。ステンレスや鉄など材質も違えば夏と冬では伸縮率も変わる。基本的に溶接は材質を溶かして、くっつけるわけだから、異材質同士の溶接なんか経験がないと絶対くっつかない。溶接場所も頭より高い所だったり、手がほとんど届かないところだったり…。そういや一度「銅」同士の溶接をしたこともあったな。「銅」って融点が低いからすぐに解けちゃって、ほっとくとどんどんなくなっちゃう(笑)。まあ一言でいえば「そのつどが新しい挑戦」でおんなじ仕事をしてる、って印象はないな。

さっきも言ったけど、鉄ってああみえてすごくデリケート。温度にもうるさいし、鉄に含まれる要素の微妙な「差」とか。
ホントは生きてないんだけど、扱う側からみるとすごいじゃじゃ馬に見える時があるね。鉄はやっぱり生きていると思いますよ。経験的にそう思うね。

鉄に心を、自然に優しさを。
うん、確かにそう言われればそうかもね。

鉄は生きている、それはたしかにそう思う。

でもあれから経験を積み、一巡したところから見ると「自然に優しさを」っていうのがなんとなくしっくりくる。
言葉そのものは(金属へ)直接の繋がりはないんだけど、金属も自然の一部であることは間違ってないわけだし、なによりも金属を加工するということは自然との一体化なんだよね。

自然という神秘は奇跡ともいえる金属を ─それも何万年もかけて─ 創り出し、俺たちに見せてきた。
そういった「自然の手のひら」で仕事をさせてもらってる、そういう感覚っていうのは時々感じるよ。

本社工場長・向日工場長 田中 

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